5.13.2015

Robert Fripp 1981 Interview - Part 1


INTERVIEW BY STEVE ROSEN, 1981
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 1969年10月に発表されたキング・クリムゾンのデビュー・アルバム『クリムゾン・キングの宮殿』によって、世界はロバート・フリップと彼の率いるグループによってもたらされる、とても楽天的な——そしてときに奇妙な——狂気を知ることになった。グループがスタートして以降、他のメンバーの音楽的配分のガイダンスとなっていたのはフリップだった。クリムゾンの進路は常にフリップによる独特なビジョンによって描かれてはいたが、しかしフリップの弁によれば「キング・クリムゾンという存在は一人歩きしはじめた」。ここでのフリップは、アンディー・サマーズとの共作『I ADVANCE MASKED(邦題:心象表現)』、そして『ディシプリン』と題された新しいキング・クリムゾンの作品に関して語る。



——あなたにとって、それとキング・クリムゾンにとって、新しいニュースがあるよね?
ロバート・フリップ(RF):私にとっては、アンディー・サマーズとのギター2本によるアルバムがそれにあたるだろう。アンディーも私も、イングランドの同じ地域の出身で、もう18年も以前から知っている仲だ。彼はボーンマウスにある「ミンズ」という名のレコード・ショップで働いていたことがある。そのレコード店には2人のならず者な店員がいて、そのうち一人がアンディーだったんだ——もう一人のならず者はクリス・スペディングだったが。アンディーはただ単純に「天然で無頓着」というタイプの人で、クリス・スペディングは「だらしない」というタイプだった。アンディーはその町にあった「マジェスティック」というユダヤ系ホテルでも働いていて、そこはバル・ミツワ(註:ユダヤ教徒の成人式。男子が13歳、女子が12歳で行なうもの)とか、結婚式とか、晩餐会とか、そんな催しをやってた場所だ。


※写真はズート・マネー&ビッグ・ロール・バンド。60年代前半にアンディー・サマーズはこのバンドに参加してプロ・キャリアを開始。その後一時期だけソフト・マシーンに参加した後、元アニマルズのエリック・バードンに引き抜かれてズート・マネーと共に後期アニマルズに参加。そのまま渡米し西海岸でエリック・バードン等と5年ほど活動を共にします。70年代中頃に帰英し、ケヴィン・エアーズとかマイク・オールドフィールドの作品に参加。その後ザ・ポリスを結成しています。
——そんなに昔からアンディーと知り合いだったんだ。
RF:ただ彼はズート・マネーのバンド(ズート・マネー&ザ・ビッグ・ロール・バンド)に参加することになりロンドンに上京したので地元を離れた。その後彼は4〜5年間くらいエリック・バードン&ジ・アニマルズに参加するためにロサンゼルスに移ったハズだ。それで別の「異教徒」が彼の後を受け継ぐ。「異教徒」は沢山いるが、「異教」てのは単体の概念だがね(訳註:原文は Is goy the plural and goyim the singular. GOYはヘブライ語聖書でイスラエル民族を指す語で、その後ユダヤ教でない人を指す差別用語として使われています。上にもユダヤ系移民の生活様式とかが出てきますが、そちら方面の知識に明るくないので、どの程度の柔らかさの台詞かがわかりませんでした。ただここでは「前任者が居なくなったからフリップがその代役として参加した。サマーズもフリップもともにユダヤ系ではないのに」という意味で使われたと思われます)。ともかく彼がいなくなって、別の人間が彼の後を受け継いだわけだ。私はその後3年ほどバル・ミツワ、結婚式、チャールストン・パーティー、素早いダンスステップのための音楽、タンゴ、ツイスト、そんなところで3年間プレイして、大学にいくための金を稼いだわけだ。
——今言ってたのが、ジャイルズ兄弟とのバンド?
RF:いや、その時はマジェスティック・ダンス・オーケストラという名だった。それが全部終わってから、私はジャイルズ兄弟と一緒になり、ロンドンへ行った。これがジャイルズ・ジャイルズ&フリップだ。


※1979年、米TV番組「MIDNIGHT SPESIAL」に出演し、フリッパートロニクスを披露するフリップ先生。フリッパートロニクスはテープエコー2台(うち1台は逆回転)とフリップの演奏という「システム」を指す言葉です。演奏し、エコーマシンがディレイ再生するフレーズに次の自身の演奏を併せて、というのを延々と繰り返す新しいインプロ演奏の形態、と言い換えることもできます。
——アンディー・サマーズとコラボすることになったきっかけは?
RF:彼から言ってきたんだ。ブロンディーと一緒に出演したTV番組「ミッドナイト・スペシャル」で私がフリッパートロニクスを披露していたのを彼が見て、気に入ってくれた。それで「一緒にアルバムを作ろう」と。
——アンディーがポリスでやってたプレイに関してどう思ってた?
RF:素晴らしいよ。アンディーは本当に、真に素晴らしいギター・プレイヤーだ。全ての人は彼の良さに気付く必要があるね。彼は前にシャシャり出て、見せびらかすようなプレイをすることはない。しかし本当に幅広い基礎がベースになってて、経験豊かなプロのミュージシャンだ。それでいてベテランのプロフェッショナルにありがちな古臭い印象など微塵も感じない。
——アンディー・サマーズを「ソロ・ギタリスト」(註:ここでは「リード・ギターを弾くプレイヤー」の意)だと考えることはある?
RF:ああもちろん。彼は素晴らしいソロ・プレイを弾くが、ポリスではたまたまそのプレイをしない、というだけだ。私の知る限りアンディー・サマーズこそが最も素晴らしいソロ・プレイを演奏するギタリストだ。実際に彼は『心象表現』の中でも全てのソロを演奏している。

※81年に録音、82年に発表されたアンディー・サマーズ&ロバート・フリップ『心象表現』。インタビューでも発言されたように演奏家はサマーズ&フリップの2人だけですが、こちらの動画(タイトル曲)でもわかるように、エクスペリメンタルというよりはポップなNYニューウェイヴ色の濃いアレンジです。MVに出てくる日本語はちょっとアレですが(笑)。

——『心象表現』はあなたとアンディー2人だけしか演奏してないの?
RF:2本のギターだけ。他の様々な楽器に関して、我々2人はまったく有能だとは言えない。部分的に、私がキーボードを、アンディーがパーカッションを担当してはいるのだが。アンディーはただブースに出て行ってシンバルを叩き付け、タンバリンを振り回し、ベースもかき鳴らしてたが。ただ基本的に、2本のギターだけのアルバムだ。
——楽曲の作曲は2人で?
RF:えーと、とある火曜日、我々は座って膝を突き合わせて「さてと、何をやろうか?」と話し合った。それで最初の5日間は作曲作業に集中した。次の5日間はその曲のプレイの練習に集中し、その次の5日でそれらを録音する作業に集中した。基本的にそんな流れではあったけど、やはり最後の2日間っていうタイミングになるまで我々の中からどんどん新しいアイデア、新しい素材が生まれでてくるものではあったが。
——アルバムはいつ発表されるの?
RF:こんどの1月に2週間かけてミックス作業をする。そこから先はちょっと分からないな。でもおそらく3月の末か、4月の頭には発売されるんじゃないだろうか。アメリカのA&Mレーベルからね。
——録音はどこでやったの?
RF:「アーニーズ・シャック」という名の、地元のボーンマウスのスタジオだよ。長いこと地元を離れずエンジニアになるためにボーンマウスの町にとどまったギタリストがいるのだが、彼がやっているスタジオで、デモ・スタジオとしてはイギリスで最良の場所だね。
——キング・クリムゾンが再結成、とのことだけど。
RF:そんな風に見える、っていうだけだ。
——なぜ? いつ? どこで?
RF:何かキング・クリムゾンから声明文でも届いたか?
——いえ。
RF:いいかい良く聞け、こういう話はとても長い時間を要するものなんだ。では君に公式声明文を授けよう。私はこの7年もの間「なぜあなたはバンドを脱退したのですか?」と質問され続けてきた(このときフリップはプレス・リリースが部屋のどこかにあるハズだと言いながら、ホテルの部屋中を家捜しし始めた)。えっと、それを実際に私が喋っているのを、テープに録音したいのだろう?
——いや、別に。
RF:ああそうか。なら良かった。
——最初に我々が会ったときあなたが私にしたことを、今思い出しましたよ。インタビューしにきたらあなたは私から質問状を取り上げてしまって、あなたは自分で質問状を読み上げて、自分でそれに答えていた。私はあの場に不必要でしたね。ところで音楽に関して話してもらえますか?
RF:何が知りたい?
——新しい作品の音楽を。
RF:そうだね。新しい音楽という言葉を使うとき、それはスタイルを指すものではない。指すべきは質なのだ。もし話が面倒くさくて混乱すると感じるのなら、ここから先は捨ててくれていい。だがこれが真実だ。新しい音楽とはスタイルとは関係ない。質なのだ。もし誰かキング・クリムゾンの名を知ってる人がいて、もし彼が過去のクリムゾン作品に興味をもってくれたとしよう。そういう人であれば、今の新しいバンドは明らかにキング・クリムゾンである、と分かってくれるハズだ。そしてこれは1981年のキング・クリムゾンだ、と理解できるだろう。歴史の中ではなく、現在の姿だと。
——以前「もうクリムゾンを再結成することはないだろう」と言ったことが一度ありますよね?
RF:ああ。今回の件が起こり始めるまではそう思ってた。だって酷い話じゃないか。とても我慢できないよ。私が「ヘイ!オイラはキング・クリムゾンを再結成しちゃうぜい!」なんて言う姿は。まったくおぞましい。だが君も知っているように、キング・クリムゾンという存在はそこに関わった人々の手から離れて、すでに単体で存在しうる巨大な存在となってしまった。とても強力なバンドで、とても奇怪なバンドでもあった。いつもイギリスでは、賛否両論が激しく争われるバンドでもある。だからバンドは混乱をきたした。あるイギリスのエージェントは我々にこう言ったものだよ——評価はたった2つしかない。一切興味を持たれないか、もしくは熱狂的ヒステリアになるかの2つだ、と。キング・クリムゾンに関して「無関心」を決め込む評価というものは長い長い歴史がある。だから私は再結成すべきかどうか、と真面目に座って検討したことなどなかった。


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