3.26.2013

Manlay Sound - Fuzz (MK3 Clone)


 無事入荷しました。スペイン・バルセロナ発のエフェクト・ブランド、MANLAY SOUNDからの新製品となります。前回のポストでも告知させていただきましたが、実機を手元に、改めてご紹介させていただこうと思います。

 TONE BENDERのクローン開発からペダル・ブランドを立ち上げたMANLAY SOUNDですから、避けて通るわけにはいきません(笑)、というワケで出来上がった、TONE BENDER MK3のクローンです。名前はマンマ「FUZZ」といいます。ただし、これでは話をするときにとっても紛らわしい名称なので、以下本稿では「MK3クローン」と呼ぶ事にしますね。

 オリジナルのTONE BENDER MK3は、これまでも多々書いてきましたが、イギリスのSOLA SOUNDによって1968年頃に開発、発売されました。SOLA SOUNDからの自社製品として銀色の筐体に入ったモノ、同時期にVOXブランドのためにOEM製造された黒&オレンジの筐体のモノ、その他ROTOSOUND社のためのOEM製品、PARKブランドのためのOEM製品、CARLSBROブランドのためのOEM製品等がありますが、いずれも製造はSOLA SOUNDで、「ダーリントン接続」されたゲルマニウム・トランジスタ3ケ、それに加えてゲルマニウム・ダイオードを配した回路だ、ということは以前コチラで書いた通りです。
 また、このTONE BENDER MK3にそっくりな回路を持った60年代のファズとして、英国BURNS社製の「BUZZAROUND」、またイタリアELKA社の「DIZZY TONE」というファズがあった、ということも前述の通りです。回路を含めてその辺のウンチクは以前のポストを参照いただければと思います。

 で、今回のMK3クローンの開発にあたっては、例のごとく「オリジナル回路に忠実に」をモットーに製造されたワケなので、基本的になんらモディファイとかそういうことをしていません。とはいえ、オリジナルのMK3はプリント基板なんですよね。MANLAY SOUNDのMK3クローンは手配線/PtoP配線なので、ある意味オリジナルよりもオールドファッションだとも言えるかも知れません(笑)。
 青い色になったというのは前回書いたとおりですが、もちろんコレ、ハンマートーン塗装です。青でメタリックでハンマートーン、というなかなか珍しいフィニッシュなんです。

 ツマミの配置は右から、歪みをコントロールするFUZZ、トーンをコントロールするTREBLE-BASS、そして本体からの出力をコントロールするVOLUMEとなっています。オリジナルとは若干の配置場所の違いがありますが、効能は同じです。

 まず特徴として、いつも当方は「MK3回路はトーンの効きがエグイ」と 書きますが、TREBLE-BASSツマミはベースのカットオフとして作用します。TREBLE側にヒネると蚊の鳴くようなシャーシャーとした音になりますが、BASS側にヒネることでベース成分が徐々に加味されていきます。
 ただし(BUZZAROUND等のファズもそうなのですが)FUZZツマミ、VOLUMEツマミと相互で試行錯誤しながらどの辺の歪みが最適か、を探り出すのに、それなりの時間がかかると思います。もちろんアンプ側をどうセッティングするか、でも音は激変しますので、なかなか安直に一筋縄ではいかない、とも言えます。

 ただし、ダイナソーJRのJマスシスが「色んな音が出せる」と言っているように、3つのツマミをアレコレとビミョーに変化させて生み出せる音のバリエーションはかなり幅広いのも事実です。ローがドロドロと出てくる歪みも、前述したような蚊の鳴くようなチリチリするようなトレブリーな歪みも、いろいろ出せます。是非、そのあたりをトライしてみていただければ幸い、と思っております。

 余計なネタをひとつ書けば、オリジナルのTONE BENDER MK3はインプットとアウトプットの位置が逆なんですよね(上から見て、インプットは左側にある)。ただし、そんな配置で喜ぶ人間は現代には独りも居ないだろう(笑)という判断のもと、今回のMK3クローンでは(他のMANLAY SOUND製品同様に)インプットが右側に、という配置にしてあります。

 トランジスタは前回も触れたようにAC125が3ケ、ですが、直接確認した所、3つのうち2つはTUNGSRAM製、もうひとつはフィリップス製のAC125が使われていました。実は毎度のことですが、ゲルマ・トランジスタの選別に今回も四苦八苦したそうです。さらに加えて今回はゲルマ・ダイオードてのも加わっているわけで、そういった「人力でのアナログな面倒くさい作業」故に、発売がこんなに遅くなってしまったというワケです。

 肝心の「実際の音」ですが、現在ROMAN GILが誠意デモ動画を撮影中ですので、そちらをしばしお待ちいただければと思いますが、当方の独断で印象を書いてしまえば、まず感じたのは「当方の所持するオリジナルMK3より、若干音がデカい」ということです。まあこれは新しく組んだ回路と40年前の回路なので、純粋な比較とは言えませんが、実際にそうでした。
 ただし元気にバリバリと歪むのはMANLAY SOUNDの今回のクローンのほうです。より幅広い音が出せるのは有り難いことですよね。他のTONE BENDER、例えばMK1とかMK1.5とかMK2などにはみられない「ジュワジュワ〜」とした歪みは、MK3回路独特のものです。爆音で耳をツンザくような大迫力ディストーション/ファズ・サウンドにもヨシ、歪みを控えめにしてバッキングで使うもよし、ロバート・フリップのように(とはいえ、彼はBUZZAROUND使いですが)ドロドロと気持ち悪い(笑)ファズ・サウンドを探すのもヨシ、というなかなか優等生なファズです。

 いつものように、当ブログを通じて直販します。直販価格は29500円(送料/税込み)となります。もしご希望の方がいらっしゃれば、こちらまで直接メールにてお問い合わせいただければと思います(ただし勝手ながら匿名でのメール/ご質問には基本的にお答えしていません。お名前の記載をよろしくお願いします)。
 実はこれまで何度かブログで「MANLAYのMK3クローン」の話を書いてきたので、以前より何人かの方からお問い合わせをいただいておりましたが、実際に入荷したのは今日(笑)です。もしまだご興味をお持ちでしたら、改めてお問い合わせいただければ幸いです。



 さて最後に、ファズとは一切関係のないネタをひとつ。皆様既にご承知と思われますがシンコー・ミュージックから絶賛発売中の「THE EFFECTOR BOOK」から、別冊のムック本が3月の末に発売になります。いつもTHE EFFECTOR BOOK本誌ではひとつのジャンルのエフェクターにこだわって(例えばファズだけとか、ディレイだけとか、そんなカンジで)特集を組むわけですが、なかなかその誌面では「何と何をどう繋げたら、どんなカンジになるのか」を紹介できない面もありました。そうしたエフェクター接続のポイントだけに特化して、こういう別冊ができたわけですね。

 デモンストレーターとして本で解説をされているのは、多くのJ-POPの作品に参加されるプロのミュージシャンで、ROLAND製品のデモ演奏等でも活躍されている中野豊さんです。「BOSSエフェクターの達人が伝授するペダル接続の妙技」というコピーも踊る表紙ですが、エフェクターの基本中の基本ともいえるBOSS製品を中心に、アレとコレ組み合わせたらこんなカンジになりまっせ、というサンプルを、誌面での解説と同封CDの音、その両方で確認するといった本になっています。
 当方はこの本の表紙デザインのみ、担当させていただきました。いつもマニアックな話題ばかりギュウギュウに詰め込まれたTHE EFFECTOR BOOKですが、セッティングを基本から突き詰めてみたい、バリエーションを増やしてみたいという方はご一読してみてはいかがでしょうか。
 

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