11.24.2011

J Mascis - Part 2

INTERVIEW BY KIT RAE. AUGUST 2, 2011
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KR:やあ、J。まず予め言っておくと、今日は君にBIG MUFFのことについて、いろいろ聞きたいんだよ。それから、ダイナソーJRなんかの作品で長年BIG MUFFを多用してるっていうだけでなくて、Jは凄まじいコレクターでもあるわけで、そんな話をしたいんだ。もちろん、TYM GUITARS(*1)からもうすぐお目見えする事になってるJの愛機ラムズヘッドのレプリカ「FUZZ MUNCHKINS」に関してもね。
JM:いいね。
KR:おそらく今でも、BIG MUFFにどっぷり、だよね?
JM:うん、もうね、その中でグチャグチャになってる。ってカンジだね。最近はどうしても欲しいっていうペダルもあまりないんだけど。
KR:今持ってるBIG MUFFコレクションって、写真に撮ってある?
JM:ああ、全部クローゼットの中にしまってあるハズだよ。写真に撮って、後で送るよ。
KR:一番最初にBIG MUFFをプレイした時のことなんだけど、いつの事かな?
JM:んー、多分ギターを弾き始めたとき、だね。丁度ダイナソー(バンド)を始めようって熱心だった頃。すぐに自分にはファズ・ペダルが必要だ、ってわかったんだ。どうやって入手したかはあんまり覚えてないなあ。たしかショッピングモールかどこかで買ったのかな。その時に出会ったDELUXE BIG MUFFはすぐ購入した。最初に買ったBIG MUFF、だね。
KR:それは初期のダイナソーのアルバムでも使ってたの?
JM:うん。最初の2枚のアルバムではそれ。だけどその後、ある夜に盗まれちゃってね。で、自分が持ってたMUSIC MANの100Wのアンプ・ヘッドとのトレードで、新しくBIG MUFFを入手した。その人物が持っていたことを前から知ってたし、僕はそのMUSIC MANのアンプの音が好きになれなかったしね。相手は「アンプとファズ1ケの交換なんて、馬鹿じゃねえの?」と思ってたようだよ(笑)。でも……
KR:それもDELUXE BIG MUFF?


(写真左)エレハモSOUL PREACHER COMPRESSORにも採用されたICチップが搭載されている基板を持つ時期のDELUXE BIG MUFF。(中央)黒地で白ヌキロゴという珍しいカラーリングのDELUXE BIG MUFF、それと70年代中期のビンテージLITTLE MUFF2つ。(右)1971年製造と思われるビンテージのLITTLE MUFF。いすれもJの所持するコレクションより。Photos ©Kit Rae(left)/©J Mascis(middle, right)

JM:そう。でも、そのMUFFは以前のモノとは音が違ってた。
KR:DELUXE BIG MUFFは2〜3度くらい回路が変更されてるし、ヴァージョンもいくつかあるし。
JM:え、そうなの?
KR:うん。小さな変更点もあった。確かに音は、ビミョーに違うんだよね。
JM:マジか。そのとき僕が入手したのは、オフにしても奇妙なファズの音が残る、っていう幽霊ファズだったんだ(笑)。オフでもほんの少し歪みが残ってるカンジで。
KR:ああアレ、知ってる知ってる。同じ現象がおこるMUFFを僕も持ってるよ。アレ、回路のせいで自然とそうなってしまうんだよね。スイッチをオフにした時、信号はトゥルーバイパスされずにひとつだけICチップを経由してしまうんだ。そのICチップがちょっとだけ信号を増幅させてしまって、それから出力される。だからどうしても少しファズっぽい音になってしまう。
JM:あー。
KR:トランジスタ仕様のBIG MUFFに移ったのは、いつ頃?
JM:おそらく最初にアメリカ・ツアーをした頃だったかなあ。アリゾナで、このラムズヘッドのBIG MUFFを見つけたんだ。それは今でも使ってるよ。


(写真左)1997年にボブ・ブラッドショウ(CAE)がラックにセットアップした時のJのエフェクター。使いまくった(がオリジナルのノブが幸運にも残っている)70年代ラムズヘッドのBIG MUFF Pi、それから70年代初期のものと思われるトライアングルBIG MUFF。#1と#2のステッカーはボブ・ブラッドショウが添付したもので、スイッチング・システムの繋ぎ場所を把握するためのもの。(写真右)ラムズヘッドのBIG MUFF、DELUXE ELECTRIC MISTRESS、そしてMEMORY MAN。Photos © Hank Reynolds



(写真)インタビューの時にJが丁度持っていたラムズヘッドのBIG MUFF。テープの張り跡がかなり残ったままで、使い込まれた跡が伺える。#2のステッカー、それと交換されたノブが付けられている。Photo © Tym Guitars
KR:あ、これが#2?
JM:そう。たしかボブ・ブラッドショウがラックにマウントする時に、#2って番号を付けたんだと思う。ラックにはもうひとつトライアングルBIG MUFFも入ってたからね。そっちには#1ってラベルが付けられた。理由はよくわかんないけど(註:1997年「HAND IT OVER」ツアーに際して、ボブ・ブラッドショウはそれら2ケを同時に、スイッチング・システムを含めてJのラックにセッティングしている。その後Jはエフェクトをフロアに置くスタイルに戻したが、CAEのスイッチング・システムは今もそのまま使用している)(*2)
KR:それはスタジオでもツアーでも両方使ってるの?
JM:うん、その通り。そのセットにして以来、メインのエフェクト・システムとして使ってる。もちろん残りのツアーでもこれを使ったし。もうこれにしてからはこのセッティングに夢中で、すっかりDELUXE BIG MUFFのほうは諦めて、ラムズヘッドの方に移行したってカンジ。ラムズヘッドのBIG MUFFだけでも大量に持っているんだけど、これだけ好きになったのはこの1ケだけだね。TYM GUITARSのティムが言ってたんだけど、エレハモは間違った回路とか、どこかしら違う回路を使ったこともある、ってことだから、だから僕の持ってる他のものもそうなのかな、と……
KR:エレハモは、初期のMUFFにはホントに沢山の変更とかパーツ違いとかあるからねえ。
JM:彼(ティム)は「ワイアリングが間違ってれば、偶然音がよくなる、なんてことは絶対にない」と言ってたね。
KR:エレハモは一貫して、定数やパーツを一定に定めてたことがないんだよね(笑)。でもそのせいで、これだけ沢山のBIG MUFFがあって、全部音が違う、なんていうことにもなった。ワイアリングが間違ってたなんてことは滅多にないとは思うんだけど、もしワイアリングが間違ってたらどんな音になるのか、ちょっと想像できないな。

註:私もこの件に関してティム本人に聞いてみた。彼は「正常なパーツで正確にワイアリングされていたとしても、パーツの定数が間違っていれば、過去のビンテージBIG MUFFとあまりにもかけ離れた音になる。僕がJに言ったのは、おそらくJが持っている他の(酷い音のする)BIG MUFFは、エレハモがどこかで間違った定数のパーツを使用してしまった個体なんではないか、ということ」と説明してくれた。しかしながら、Jが使っているBIG MUFFの回路は実際には現代的バージョンで、76年〜79年あたりに製造されたBIG MUFF(バージョン2後期、もしくはバージョン3と呼ばれるモデル)としてはいずれも一般的な定数を持っていたもの。私も同じものを2つ所有しているが、エレハモが製品構成にかなり律儀に一貫性を持たせていた頃のモデルであり、この頃のMUFFは皆かなり同一のサウンドが約束されるものなのだが。

JM:ああ、だからティムは僕にそう言ったのか。僕が言いたかったのは「全部音が違う」ってことなんだよ。僕は過去、どれひとつとして「全く同じ音が出るMUFF」ってのを経験したことがないね。
KR:僕は長い事自分が持ってるあらゆるMUFFの回路を研究しまくってるんだけど、ラムズヘッドは12ケくらい持ってるかな。あ、いや、22ケだったな。で、そのうち20ケは回路が異なっていたね。構成とか、定数とか。
JM:ああ。
KR:当然音は皆違う。ところで、その後あらゆるBIG MUFFを集めていくようになったワケだけど、どういうカンジで最初のラムズヘッドから卒業することになったのかな?
JM:ツアーをやり出して、お金が沢山入るようになってからだね。タコマに、GUITAR MANIACS(*3)ていうお店をみつけてね。ここは膨大な数のエフェクターを売ってる店で、そんなに沢山売ってる店はそれまで見た事もなかったよ。ここならもっと古いBIG MUFFもあるだろう、と思った。ラムズヘッド以前のものとか。ここには青のラムズヘッドもあって、それは速攻で購入した。それからはもうビンテージものをディールしてるような(エフェクターに)詳しいショップに行くようになった。もう、見に行くだけで、いつだって欲しくなるんだよ(笑)。で、ちょっとしたらまた束で買ってくるような。青のラムズヘッドは持ってる、次は紫の……ってカンジで。

(写真)J所有のトアイアングルBIG MUFFコレクションの一部。Jは97年頃おおむね10ケ程MUFFを持っていたが、今では40ほどにまでコレクションは膨れあがっている。真ん中にあるスライドスイッチのないモデルは、極めて初期の(おそらく1970年製造と推察される)バージョンのBIG MUFF。Photo © J Mascis


(写真)Jが所有してる「赤黒」カラーのラムズヘッドBIG MUFFコレクションの一部。真ん中の「ON」の文字が消えてしまってるものは、これが赤いラベリングが施されたBIG MUFFヴァージョン2初の赤カラーの個体であることを示している。これらはエレハモが70年代の中盤〜後半にかけて、初めてDAKA-WARE(*4)のノブを採用したモデルでもある。Photo © J Mascis

KR:ほとんどがビンテージのアメリカ製BIG MUFFだよね? いままでJがたくさんのトライアングルとかラムズヘッドのMUFFを持ってるのを見たけど、ロシア製MUFFにハマったことは、過去一度もないの?
JM:ないねえ。トライアングルにハマったことはちょっとの期間だけあった。でも大半の時間はラムズヘッドに夢中だった。ねえ、いろんなカラー・バリエーションのラムズヘッド、持ってる?
KR:おそらくエレハモが使ったことのあるカラー・バリエーションは全部持ってるよ。多分、エレハモは全部で5色か6色、使ってる。
JM:僕が持ってるのは、紫、青、赤、あと黒、だなあ。

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*1 オーストラリアのブリスベンにあるギター・ショップ(ですがレコードやCDも売ってます。他に楽器レンタルやスタジオ運営、リペア業等も)。オリジナル・ギター・エフェクターの制作・販売も行っています。HPはこちら。「Jのラムズヘッドのレプリカ」に関してはインタビューの後半で詳しく紹介されています。
*2 97年頃のJのラック・エフェクト・システムに関しては、CAE(CUSTOM AUDIO ELECTRONICS)の公式HP内にあるJ MASCISのコーナーで、他の写真も数点見る事ができます。現在とはいくつかペダルが入れ替わってますね。
*3 アメリカ北西部の端のほう(シアトルのすぐ下)ワシントン州タコマにあるギターショップ。自前のHPは持っていないようなので、品揃えとか店の雰囲気なんかはちょっとわからないママなんですが、同店はFACEBOOKやMYSPACEのページを持っているようなので、そこからアクセスは可能かもしれませんね。
*4 DAKA WAREは米シカゴにある老舗の「ノブ・パーツ」ブランドの名前(会社名はデイヴィス・モールディング社という名前)で、チキンヘッドとかあらゆる形状の多種多様なノブを作ってるブランドなんですが、どうもインタビュー中ではこの「DAKA WARE」という単語を黒くて丸いノブの形状、という意味で使っているフシがありますね。世間的には「ポインター・ノブ」と呼ばれているようですが。余談ですけど、大昔、まだハンドシフトだった時代のハーレー・ダヴィッドソンのシフト・ノブもDAKA WARE製でした。


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