4.22.2011

JMI - Tone Bender Professional MK2 (Mullard OC81D Limited)

 
 とりあえず ワガママは言うだけ言ってみるモンだ(笑)、ということを実証する形となりましたが、ついに待望の最新版TONE BENDERが到着しましたので早速ご紹介したいと思います。こちらは英国JMIが2011年春、限定「10ケ」で製作したTONE BENDER PROFESSIONAL MK2です。まず先にJMIの広告に掲載された仕様を書いてみます。

・ハードキャスト・アルミ筐体
・グレイ・ハンマートーン塗装
・オリジナルのNOSムラード
 OC81Dトランジスタ(英国製)

・10ケ限定生産
・ビルダーによるサイン入り
・JMIキャリー・ケース付き

 広告の下のほうにある宣伝文句では、「1966年頃に実際にあったTONE BENDERのOC81Dモデルを復刻/スゲエ音だぜ!/オリジナルは2500ポンドくらいするぞ/オリジナルのムラードOC81Dトランジスタはめっちゃレア/それでも我々は少量だがそれを確保した!/究極の音だ!」とか勢いのある(笑)文面があります。一応書いておきますが、これは当方が作った文章ではないですよ(笑)。

 その文に続けて、サウンドの特徴も英文で記してあります。いわく「OC81Dは、OC75よりもよりサチュレーション(飽和感)が強く、そのサウンドは丁度メタルケース入りのMK1と通常のMK2の中間、ってカンジ」という文章があります。
 言わんとすることにはなんとなく同意します。それにこれは宣伝文句ですから、勢いは必要ですよね(笑)。ただし、個人的にこの文章に註釈を入れるとすれば、MK1とMK2の「中間」では決してありません。音に関しては、最後の方でまとめて改めて触れたいと思います、

 ともかく、まずは外観ですが、筐体も塗装もJMIがリリースしている他のTONE BENDER MK2(前回の記事を参照願います)と同じです。外観上の違いは、裏蓋に記載されているビルダー(ニック・ブラウニング氏)の手書きサインしかありません。以前「ムラードOC75版」(こちらは詳細を後ほど別途アップします)では「MULLARD LOADED」と記されたステッカーが裏蓋に貼ってあったんですが、今は手書きサインに変更された模様です。

 さてさて、さっそく気になる実物の中身に関してです。トランジスタには3ケとも、おー、本物の英国ムラード製シルバーキャップが3ケ使われてますねえ。当然ですが、素晴らしい。写真でもお判りいただけるように、シルバーキャップのトランジスタ表面にプリントされてる文字が縦書き/横書き、という違いがあり「OC81D」もしくは「OC81」とプリントされています。TONE BENDERマニア、とくにMK2マニアのあいだでよく話題になるテーマなのですが、OC81とOC81Dの違いは一体何なのか。これまで判っていることを以下に記します。

 60年代当時ムラード社が公開していた製品カタログのスペック表によると、「OC81」と「OC81D」の違いはVCBO(C=コレクタとB=ベースの間に掛けられる最大電圧値/トランジスタのいくつかある規格値のひとつ)の違いで、OC81は20V、OC81Dは32V、とされています。VCBO以外の規格は共に同一の規格です。MK2回路ではトランジスタには最大で18Vが掛かるとされていますから、どちらでも問題ないことになっています(聴感上の違いはない、と言いたいところですが、違いの判る方ももしかしたらどこかにいらっしゃるのかもしれませんので断言は避けます)。

 現在イギリスでムラード・パーツ他こういったヴィンテージ電子部品を取り扱うディーラーの方の弁では「本来OC81Dは9Vの電池を2ケ(18V)使う電子部品で採用されるパーツだったハズで、もし回路が9V電池1ケの回路であれば、OC81Dをわざわざ使う意味はない」ということを仰っています。また、個人で研究し自作TONE BENDERを製作しているとあるイギリスのビルダーの方(よくeBayでお見かけするビルダーさんです)も、今回のJMI製品と同様にOC81とOC81Dを組み合わせて製作しているのが確認できます。

 上記のことは一応検索でもしていただければどなたでもご確認いただける事と思いますが、何度もこれまで触れているように、この文章を書いている当方は「ああそうなのね、で、それがどう音に影響するのか」という問いを理論的にスパッと説明できるような電気知識を持ち合わせていません。とりあえず見てわかることは上記のことに加え、このJMI最新のTONE BENDERではトリムポットが採用されていることで、おそらくバイアスの調整をかませてある、ということです。

 さて、なんと言ってもダダをこねて作ってもらったファズですから、一番重要なのは音です。実は手元に今、JMI製の「英国ムラードOC75を使ったMK2」もあるので、その比較が出来ました。その感想を書きます。ただし、これにはトランジスタ各々の個体差、加えて回路上で3つ使用することでの組み合わせから生まれる差、という2重の差が存在します。その点はご理解の上、参照いただければと思います。

 まず、上にある宣伝文の件ですが、間違いなくムラードOC81D版のほうがアップアップでパッツンパッツンに飽和します。これは例えばレスポールでフルボリュームで弾いた時なんかは一発で判ります。OC75版のほうがもっと開放的で、トーンの上のほうも下の方もググっと伸びがあります。
 OC81D版のほうは対照的に、中域がもっともっと濃密です。この感触は思い切りクリーン・セッティングにしたアンプとシングルコイルPUで弾いてみれば一発でわかります。ですが上記したようにすぐにアップアップな飽和感が生まれてしまうので、ギターのボリュームにより敏感に反応するのはOC75版のほう、ということになります。

 JMIが今回使用した宣伝文「MK1とMK2の間」という言葉は、恐らくこのパッツンパッツンな飽和感と思い切り中域よりの歪みを指して言っているのだと思われます(ですから当方も、なんとなく同意はできます。笑)。常にアンプのインプットの時点でヘッドルームが限界ギリギリ、という高いゲインの信号を入力しているようなプレイヤーの場合には、このファズは「ただモーモーいうだけ」という印象を持たれるのかもしれません。
 比較で書けば上記のようになると思うんですが、そうはいってもどちらも共にMK2。実は、ツマミの位置こそ違えど、OC75/OC81D両方のモデルでほぼ同じような音を出すこともできました。これは当然楽器やアンプの特性と関連するので、全部がそうだ、とは言えませんが、双子のような存在のMK2ですから納得の結果ではあります。

 一番言いたいのは何か、と言いますと、正直言って無理言ってオーダーして高い金はらって個人的には「良かったぜ」ということです(笑)。価格のこともありますし、万人に向けておすすめするTONE BENDERではありませんが、「OC75版よりももっと濃密な中域の歪みが欲しい」という方で、これまで既にいくつかお試しになったTONE BENDER MK2では満足できなかった方は、是非このムラードOC81D版をお試しいただければ、と思います。

 が、実は手元に現時点で2ケしか入荷しておりません。1ケは当方が保持し、もうひとつは既に購入者が決定しております。近日中にあと数ケ入荷する予定ですが、日付が確定してないので、ここで「NOW ON SALE」と告知できない状況であることをご了承願います。価格を含めて、近々続報を入れますので、引き続きよろしくお願いします。
 

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