2.13.2011

Tone Bender - Leon Cook Collection (pt.2)


 そんなわけで前回に引き続き、イギリスのレオン・クック氏所有のファズ・コレクションの中からTONE BENDER関連のペダルをご紹介しようと思います。今回はMK2以降の製品、というカンジになりますね。
 ちなみに、この冒頭に掲載した集合写真をチラっと見てもわかるように、実はクック氏はTONE BENDERに限らず、英国製を中心としたあらゆるビンテージ・ペダルをお持ちです。歴代のFUZZ FACEに加えてTREBLE BASS FACETREM FACEといったレアなダラス・アービター製品、ファズ以外のカラーサウンド製品、そして MANLAY SOUND「THE XS」の元にもなったエレハモ初期のAXISやギルドFOXY LADY等も見えてますね。古いワウもいろいろお持ちで、羨ましいっスねえ・・・

 さて、まずはマーシャルのブランド名を冠したTONE BENDER、として知られる、67年製マーシャルSUPA FUZZです。こちらのものはその初期の製造個体で、ご覧のように筐体のエッジ部分がシャキッとシャープにかたどられていることがお判りいただけるかと思います。ロゴはブランド名が筆記体、モデル名が太い書体、という時期のモノです。

 裏面/中面の写真を見ても判るように、実は裏蓋は結構無骨でマッスグな板であることが見て取れますよね。これ以降の時期のSUPA FUZZでは、裏蓋の形が違うので、互換性がありません。

 中身に関してはこれまでも書いてきたように、ゲイリー・ハーストがデザインしたSOLA SOUND TONE BENDER MK2とまったく同じ回路、となっています。トランジスタはブラックキャップのムラードOC75が3ケ、という回路です。

 そして下に、もうひとつマーシャルSUPA FUZZを掲載したいと思います。こちらは上記した個体よりやや後に作られたもので、筐体のエッジがやや丸みを帯びたデザインに変更された後のものになります。ロゴ・プリントも、マーシャルの名は太いイタリック書体に、モデル名が細い筆記体、と変更されています。

 一見するとノブも違うモノのように見えますが、これは(マーシャルのアンプ所有者であればおわかりかと思われますが)同じモノだけど、上の方のモノはトップのキャップ部分が取れてしまっただけ、というモノです。
 SOLA SOUND社の製造品にありがちなことですが、前掲のモノと比べると、この時期のマーシャルSUPA FUZZでは内部基盤の配置位置が表裏逆になっています。同時に、基盤を固定する台座(?)部分も大きなものに変更されてますね。とはいえ変更部分はそのくらいで、中身は全く同じものです(ちなみに、SUPA FUZZは途中でプリント基盤に変更されるわけですが、それでも回路は全く同じものでした)。

 ただし、写真でもわかるようにこの基盤、後からどうも付け直しされた形跡があるので(ネジ穴がズレてるのが見えますよね)、フルオリジナルかどうかはちょっと断言できません。
 先ほど触れた裏蓋の形に関してですが、こちらの写真と比較してみれば、後期の筐体は途中から細くなっていって、極端に言えばホームベース状に角度がついていることもお判りいただけるかと思います。


 続いては、カラーサウンドのブランド・ロゴを冠したTONE BENDER MK3です。この時期(70年代)のTONE BENDERは色んなパターン・プリント(回路ではなく、外見の話です)があるので、パッと見ていつ頃のどんなモノかはなかなか判り辛いワケですけど、ここに掲載したものは70年代初期のものと思われます。例えば復刻版等でもお馴染みの、黄色い筐体のモノなんかも、70年代初期の時期からその存在が確認されています。ようは、ソーラーサウンドのTONE BENDER MK3には、中身が同じでもいろんなデザインがありますよ、ってことですよね。
 初期MK3(ゲルマ・トランジスタを使用していた時期のモノ)の回路に関して、トランジスタで一番多く使われてきたのは、どうもシルバーキャップのOC71だろう、ということが最近判ってきました。勿論他のトランジスタを使用したものも実際にあるので、どれが正解か、という答えがあるわけではないのですが。

 そんなヤヤコシイ感じ(笑)の経緯を持つTONE BENDER MK3ですが、とりあえずドカっとまとめて撮ってみた、という写真がこちらになります。

 製造に関しては全部イギリスのソーラーサウンド社が作ったモノです。左からPARKブランドで発売されたFUZZ SOUND、その隣がCARLSBROブランドで発売されたFUZZ、そして右2つが自社ソーラーサウンドのブランドで発売されたTONE BENDERで、外見はほぼ同じですが中身が違うモデル2種、となります。
 中身の写真を見ていただければ、左の3ケに関しては、回路が全く同じものであることがわかりますよね。
ですが一番右、つまりシルバーグレイの筐体に入ったTONE BENDERなのに、回路がすっかり変わってしまったものもある、というワケです。
 その新しい回路は世間一般でMK4回路と呼ばれたりすることもあるのですが、「MK4」と名付けられたTONE BENDERにはその回路が搭載されていなかったことも一因となっていて、実は「何がMK3で、何がMK4なのか」というその呼称に関してはなかなか面倒な問題をはらんでるわけです。

 それはなぜか。例えばこれは以前も紹介したことのあるモデルですが、70年代後半にVOXブランドから発売された、黒い筐体に入ったVOX TONE BENDERは、この「MK4回路」を持っているのに筐体には「MK3」と書いてあったりします(ちなみに、その直前には、フツーにMK3回路が収められたVOX TONE BENDER MK3もあった、というのは以前こちらで書いた通りです)。

 そんな経緯もあり、何がMK3で何がMK4か、ということに関しては、本ブログでは厳密な境界を定めていません。実際に世界中のファズ・マニアの人も「これがMK3だ」と書いていてもその定義が曖昧で誤解を招きやすい結果となっていることも多いからです。
 唯一判りやすい境界線、として、カラーサウンドがその筐体を横に幅広く、大きくした時期、というのが挙げられます。これは70年代後半とのことなのですが、また新しいデザインでいろんなTONE BENDERがパカパカと発売された時期のことです。写真はTONE BENDER JUMBO、と書かれたファズで、その中身は上述した「一般的にMK4回路と呼ばれるもの」が入っていることがわかります。シリコン・トランジスタが用いられたこの回路は、当時としては最新版TONE BENDER回路と呼ぶべきものではあるのですが、この回路も他社のOEM製品としていろんなブランドから発売されています。

 上述した黒いVOX TONE BENDER MK3(でもMK4回路)なんかもそれにあたりますが、それ以外にもこちらに写真を掲載した、ユーロテックというブランドが発売したBLACK BOXというファズもそれに該当します。これ、もの凄くレアなファズなんですが、一見してTONE BENDERとはまったく思えない、スペイシーなデザインが素敵な、コンパクトな筐体に収まったファズですね。回路はそのシリコン3石を使用したMK4回路です。ただし、上述した各種MK4回路と違って、こちらのユーロテックBLACK BOXはコントロールが2ケになり、もうひとつ表にはないコントロール(FUZZのノブにあたると思われます)は内部トリムポットで調整、というモノになっているようです。

 以上レオン・クック氏の所持品を見ていきましたが、TONE BENDERの歴史をザラっとまとめるのに丁度いいカンジだったのではないかと思われます。……TONE BENDERって、なかなかメンドクサイでしょう?(笑)

all photos courtesy of Leon Cook / Paisley Tubby Effects


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