6.19.2010

Tone Bender MK3 (1968)

 またご無沙汰の更新になってしまいました。たった今WCで日本がオランダに惜敗したのですが、その屈辱を胸に、更新します(笑)。
 これまでオリジナルのTONE BENDERというファズに関しては、大まかに分類して
MK1(65年製/金色の最初のTONE BENDER)
MK1.5(66年製/FUZZ FACEと同じ回路を持つもの)
MK2(66年夏頃/1.5のアップグレード版)
VOX TONE BENDER(イタリア製/ゲルマ2石)
という4種類を紹介してきました。60年代の製品という意味では、ここまでが例のバカでかくて重い筐体に入っています。で、今回はその次にいきます。MK3です。

 ソーラーサウンド社は、新しい筐体と新しいPCB基盤、そして新しい回路で、1968年にTONE BENDERを発売します。それがこの、弁当箱のような鉄板の筐体で、ノブが3つあるものです。これらは現在TONE BENDER MK3と呼ばれるものですが、当然のように当時(最初)はMK3とはどこにも書いていません。ただし、後にこのTONE BENDERがOEM製品で他社のラベルをプリントして発売になった際には、MK3と書かれているものがあり、ソーラー・サウンドとしても(PROFESSIONAL MK2、とうたった)前回のTONE BENDERの、リニュアル版だ、という打ち出しをしていたことになりますね。

 ジェフ・ベックやジミー・ペイジが使用した、ともっぱら有名なMK3ですが、実際には写真等ではまだ確認できていません(ベック、といえばPOWER BOOSTという有名なペダルがありますが、TONE BENDER MK3とそれとは一応違うペダルです)。
 写真でもお判りのように、FUZZコントロール、VOLUMEコントロールに加えてTREBLE-BASSコントロールが追加されています。左に回せば明るいパリパリとしたファズ・サウンドが、右に回せばドロドロの重たいファズ・サウンドが、というコントロールです。

 DAMのデヴィッド・メイン氏によれば、「これでやっと大量生産できるペダルになった」とのこと。この当時はまだMARSHALL SUPER FUZZという形でMK2回路のTONE BENDERは市場に出回っていた時期ですが、ソーラーサウンドは自分たちのブランドで先に改良版と出した、ということになりますね。

 このファズの回路はどうもゲイリー・ハーストではなく、別なデザイナーによるもののようですが、誰が回路を作ったはまだ分かっていません。初期のMK3はPNPゲルマニウム・トランジスタで、OC71(しかも、ダラスRANGEMASTER等で有名なムラードのブラックキャップではなく、写真のようにシルバーキャップのものだったようです)。ただし、このMK3は個体によってかなりいろんな種類のトランジスタが確認されているので、どうもトランジスタを固定では設定してなかったのだろうと思われます。
 例えばこのMK3のOEM製品でVOXの名が付けられた「VOX TONE BENDER MK3」という黒いペダルがありますが、そちらには2N3906というPNPのシリコン・トランジスタがついていたりします。

 音という意味では、これまでのTONE BENDERシリーズとはちょっと違います。トーンのコントロールがあるので、そういう意味では歪みの位置を任意に設定できる事、またかなり歪ませることもできるという面でも、より(時代の要望もあったのでしょうが)ディストーション的な使用が可能な個体であると思います。

 MK3シリーズは自社のソーラー・サウンド製のものと、同社がOEM製造した、PARKブランドもの、前述したVOXブランドもの、CSL他にも(弦のメーカーとして有名な)ROTOSOUNDもの、(アンプ・ブランドの)CARLSBROものなんかがあったりします。それらのOEM製品の中には2ノブのものがありますが、それはゲイン値が固定されているそうです(スイマセン、2ノブものを試したことがないので、伝聞情報です)。

 これも誤解が多いようなのでここでまとめておこうと思いますが、このTONE BENDER MK3と同じデザインのTONE BENDERを発売している「COLORSOUND/カラーサウンド」というブランドが世界中ですでに有名だと思います。「カラーサウンド」とはソーラーサウンド社のエフェクターブランドの名前で、1970年代の極初期にスタートしたブランドです。DAMのデヴィッド・メイン氏も言ってますが「SOLA SOUNDから出たもので、COLROSOUNDと書いていないもの(つまりここで写真を掲載したようなモノ)は数が少ないので、そんなものはないんじゃないか、と思っている人が多い」と。ここでも記したように、このシルバーの鉄板筐体のTONE BENDER MK3は1968年に発表されており、70年頃に「カラーサウンド」というブランド名が登場するまでは2年弱のブランクがあります。つまりその間はこのTONE BENDERはソーラサウンドという会社と同名のブランド名でリリースされていたことがわかります。

 まとめると、ソーラー・サウンド社(実は今でも会社があります。今は創始者の息子さん世代の親族が複数代表となって経営しています)は最初のころは会社名をそのままブランド名として使用していたが、70年代からはカラーサウンドという新しいブランド名を使い始めた、ということです。

 このMK3以降のソーラーサウンド製品は、後に90年代になってから日本製(その後イギリス製に変更されましたが)で復刻されたことが記憶に新しいところですが、今でも当時(60〜70年代)と同じデザイナーさんが、筐体のデザインをされているそうです。先日現在のソーラーサウンド社の代表の方と何度かメールでやり取りをし、いくつかお話を伺う事が出来たので、機会を見てそれらもここで書き記したいと思います。
 追記です。これまでCSLブランドから発売されたMK3の写真(拾い物画像だったのですが)をここに小さく掲載していたのですが、実際にそのファズをお持ちの方から「これ俺のMK3じゃん。もっと載せてくれ」と言われてしまい、他の画像もいただきましたので、改めて掲載することにします。
 CSLはCHARLES SUMMERFIELD LIMITEDというイギリスの会社で、沢山ではないですが70年代に楽器機材を発売していた会社です。ここに掲載したファズは「SUPER FUZZ」という名前で発売されていたもので、中身は上にも書いたように、SOLA SOUND社が製作したMK3そのまんまです。
 ちなみにCSL社は他にもPOWER BOOST、WAH FUZZ、WAH WAH等といったペダルも発売していて、上掲したSUPER FUZZ同様に、いずれも中身はSOLA SOUND製の同名製品をそのまんま転用して再ラベリングした製品でした。
 

3 comments:

  1. Weird, but the CSL Superfuzz you have pictured is mine. Or not so weird, they're not too common...

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  2. did put it off from the posting, I apologise if you mind that pasting.

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  3. No, please include the picture, I don't mind at all.

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