4.11.2010

John Hornby Skewes / Zonk Machine (1965)


 初めてこのサイトでMK1のご紹介をした際に、オリジナルと同じく65年に発売された世界初のTONE BENDERクローン、とも言えそうな青いファズ、JHS社のZONK MACHINEというモデルを掲載しました。
 そのJHS社(正式にはJOHN HORNBY SKEWES社)は他にもTONE BENDER系のファズを当時発売していて、本稿ではそれらをちょっとまとめてみたいと思います。ちなみに筆者はその現物を拝んだことがないので、残された文献や写真等から整理することしかできませんが。

 JHS社は65年、イギリスのリーズにて設立され、現在もギターものを中心に機材を販売しているメーカーです。オフィシャルのHPはこちらですが、いきなりポール・ウェラー先生がババンと登場してビックリしました。今このJHS社はFRETKINGというギター・ブランドを持っていて、ウェラー先生はここのテレキャスを使ってるんですね。

 話がそれましたが、JHSから青いMK1風(とはいえ、何から何までそっくりですが)のファズZONK MACHINEが発売されたのは65年末だそうです。今ではその経緯を確認することは不可能ですし、ゲイリー・ハースト自身も「自分は全く関与していない」ということを証言しているので、確たるものは何もありませんが、ソーラーサウンドのMK1とほぼ同じ(とはいえ、ボルトの位置やノブなど、些細な違いは勿論見受けられますが)筐体を持ち、ブルーのハンマートーン塗装が施されたモデルでした。
 その内部回路は、現在JMIの技術者が言うには「ソーラーサウンドのMK1と全く同じ」ということなのですが、写真で確認できたオリジナルの現物を見る限り、いろいろと違いは見受けられます。まず、MK1が「OC75/2G381」というトランジスタ構成だったのに対し、こちらは「ムラード製OC75かOC71/ムラード製OC44かOC71/TI社のA02650」という3ケのトランジスタ構成になっているようです。またその基盤構成は、オリジナルのMK1の基盤(写真左)が黒い板の両端で接点を作っているのに対し、ZONK MACHINEでは(写真右)ご覧のようにボードに穴をあけて足を通し、裏で回路を繋げていることがわかります。オリジナルのMK1とZONK MACHINE、その両方の回路図を見比べても、抵抗値に若干の違いが見受けられますが、ほぼMK1の回路そのマンマです。

 そしてそのJHS社はその後このZONK MACHINEの改良版を発売します。まずはそのまま続編、ということでTHE ZONK2と名付けられた青いファズです。見た目はほとんど初代ZONK MACHINEと同じですが、中の回路を見るとトランジスタは2N4061というPNPのシリコン・トランジスタが2ケ使用されています。また回路レイアウトも大幅に修正され、もの凄くシンプルな回路に変更れています。
 つまり、ゲルマ3石の「FUZZ TONE的な原始的ファズ回路」からの脱却、とでも呼べばいいんでしょうか。オリジナルのTONE BENDERがその後MK1.5に変遷したように、いわゆるFUZZ FACE的なトランジスタ2石の回路にリファインしたモデルだということが容易に想像できます。さらに加えてJHS社はいち早くシリコン・トランジスタの歪み回路に着手したということもわかりますね。繰り返しになりますが、筆者本人はこのZONK2を弾いたことがありません。ですので音の傾向を記すことができませんので「FUZZ FACEみたいな音だろう」と想像はできても断言できないことはあらかじめご容赦ねがいます。

 また、JHS社は別なモデルも発売しています。それはSHATTERBOXと名付けられ、金色のハンマートーン塗装が施されたモデルです。そこまでコピーしていいのかよ、と今なら間違いなくオリジナルの会社から訴えられそうなデザインではありますが、中身はまったく違います。
 こちらはまさに「2 in 1」を目指したようなペダルで、上記のTHE ZONK 2のファズ回路にトレブルブースターをくっつけたペダルです。よってフットスイッチが2ケあり、独立して作動するようになってるみたいです。

 SHATTERBOXのトレブルブースター回路も2N4061というシリコン(余談ですが、今ではPNPのシリコン・トランジスタなんてほとんど見かけることさえありませんよね)のトランジスタで作動します。んー、これ欲しいなあ。こないだオークションにコレが出たんですけど、MK1と同じ位の値段になっちゃったので、早々にあきらめましたが。
 ちなみにJHS社はもちろん単体でのトレブルブースターも発売しています。真四角な筐体で青のハンマートーンという、なかなかグっとくる渋いルックスですね。回路は上述したもの、そのまんまですが、フットスイッチではなくダラスRANGEMASTERのように手でスイッチを入れるタイプのもののようです。ただしRANGEMASTERとは違って、ゲインを可変コントロールするノブが見当たらないので、スイッチオンで一定のゲインを稼ぐ、という原始的な回路だと思われます。

 さて、ありとあらゆるTONE BENDERファズの復刻に余念のない現JMI社は、なんとその初代JHS製ZONK MACHINEの青いファズまで、今年2010年に250ケ限定で復刻しました。スゲー。おそらく日本にはまだ入ってないと思われますが。回路はJMIがリイシューしたTONE BENDER MK1とまったく同じものを流用してるので、トランジスタはOC751ケと2G381が2ケ、という組み合わせです。筐体も折り曲げ式のMK1の筐体を流用してると思われます。

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